読書

高橋源一郎、エミール・シオランの夕〜Public Image Ltd. の夜

goo には昨日アップしたのですが、Hatena ログインできずで、初めてオペラを使ってみました。新鮮です。ですので、昨日金曜の話。 - 今日はただの日記。ただし「文学」がテーマなので「読書」カテゴリ―に。今週は風邪でふらふらしながらそれでもだいたい働い…

野矢茂樹『入門! 論理学』―この世にあってもっとも美しいことの一つ

今年最初の本のレビューは、すばらしい論考にいつも勉強させていただいている tokyocat さんという方のブログ(http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20061008)で興味を持った“難しそう”な論理学の本です。テーマを「論理学」に絞った本を読んだのはおそらく初め…

加藤幹郎『映画館と観客の文化史』―だから映画は美しい。作品も観客も

年も押し詰まり寒くなりました。今日は「読書」、映画についての本です。映画はきちんとみたいと私は思っている。できれば映画館で、自宅で録画でもそれなりに姿勢を正して、最初からエンドロールが消えるまで。この本を読んでも、その気持ちに変わりはない…

野上弥生子随筆集『花』―「山よりの手紙」の中の『マルクスの娘たち』

U2だのイーストウッドだの荒くれた話が続いたので、ここで一つ、明治生まれの女性が老境に達してから書いた随筆です。【introdoction】 著者の wikipedia の解説は(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E4%B8%8A%E5%BC%A5%E7%94%9F%E5%AD%90)。1885…

湯本香樹実『ポプラの秋』―夢見る時間だけにわかるほんとう

今日も暖かな11月。昼間はこの小説に触発されたわけではないけれど、サツマイモを掘りました。本作によれば、新聞紙とぎんがみでくるんでポプラのはっぱで焼くのだそうです。【introduction】 湯本香樹実さん―こうやって書いてみると、何ともいえず美しい名…

島田雅彦『退廃姉妹』―「だらだら」と“感動的”であること

島田雅彦氏の小説世界のもっとも大きな魅力は、完璧ともいっていい見事な「だらだら加減」にある。少なくとも今まで私が読んだ中では。 たとえば、新聞小説ということも手伝って、架空のだらだら世界に徐々に身を沈めていく快感が味わえた『忘れられた帝国』…

熊野純彦『西洋哲学史―古代から中世へ』―思考の言葉の美をそのまま味わう

著者のねらいは、おそらく単に「西洋哲学史」の紹介なのではない。誰がどんなことを考えたということでなく、誰がどんな言葉を使ったかということ、その哲学の思想とともに言葉の美しさをそのままに、哲学詩として読者に味わってもらうことだったのではない…

青木奈緒『うさぎの聞き耳』―「文は人」

幸田露伴を祖に、幸田文、青木玉さんと続く名文一族の同い年作家。奈緒さんの存在を知ったのはNHK教育でやっていた祖母晩年の随筆『崩れ』の道筋をたどる仕事のドキュメントで、同い年だということで途端に親近感を持った。1963(昭和38)年は「卯年」で…

町田健『チョムスキー入門』―いいたい放題の、正しい「入門」

確か『先生はえらい』でだったか内田樹氏が、本でおもしろいのは「入門」だと書いていて安心した憶えがある。たまたまそういう時代だったか、学生の頃は翻訳とはいえドゥルーズだのロラン・バルトだのの本人の著作を大体古本屋でも高い金を払って読んでいた…

宮本常一『忘れられた日本人』―私はいったい何をしているのか

読んで思った。現代人は、というより、私はいったい何をしているのかと。 例えば地球の裏側で行われているボール遊びを一大事と考えて大騒ぎしたり、ききとれもしない言葉で歌われる歌に現を抜かしたり。21世紀の日本に生きることで得られるこうした愉しみは…

帯に「24時間戦う遺体科学者 動物進化の神秘へ迫る」。もちろん写真も満載。何やら尋常ならぬ著者の顔写真も魅力的で、つい買ってしまったらかなりおもしろかった。 本書の美点は多い。まず生物の本としては異例といえるリリックな表現、そして同じ解剖学の…

酒井邦嘉氏の著作に触れて驚かされるのは、何よりその「わかり方」によってだ。 私は「わかりやすくわかる」ということを、あまり信じることができない。そのため「わかり方」を語ろうとして、かえってわかりにくくなってしまいがちだ。そんなこともあって、…

【introduction】 寄生虫学の立場から「超清潔思向」に真っ向から食ってかかる著者の発言は、新聞などで読んで注目していました。著書は初めて。【review】 たまたまブックオフで見つけたので買った文庫版だが、茂木健一郎氏の著書に続き選択ミス。おもしろ…

【introduction】 塾OB・I君によれば、「最近テレビでもよくみます」の茂木氏。とはいえ、スポーツと映画、たまにニュースくらいしかみない私は画面で拝見したことはありません。 新聞書評などで読んだ「クオリア」という概念には興味を持っていたものの…

【introduction】 肩書は文化人類学者の上田氏の文章は、新聞や雑誌で読んで気になっていはいました。『朝まで生テレビ』でも何度か。しかし一冊まとめて読むのは初めてです。 ど真ん中ストレートのタイトルはなぜか買う時には気にならず、読み終わってから…

【introduction】 『フランケンシュタイン』を素材に、小説の技法と批評理論を紹介する知的興奮にあふれた一冊。帯の「理論を知ることによって、直観はさらに鋭いものへと磨かれる」に大いに納得。読んだ後、自分が少し磨かれて尖った気がします。【review】…

吉田修一著『ランドマーク』講談社 ブックオフで購入 9月7日読了【introduction】 吉田氏の作品は芥川賞の『パークライフ』以来。大宮に建設中のスパイラルビルの建築家と鉄筋作業員、2人の生活を交互に描き、ビル同様にねじれていくイメージがクライマッ…

【introduction】 同年生まれの重松氏の作品は数冊読んだだけですが、次回が最終回の毎日新聞連載http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/bebe/shigematsu/ など小説以外の仕事にも敬意を感じています。 12月にSABU監督で映画化もされるという本作は、家…

『新人生論ノート』木田元著・2005年集英社新書【introduction】 ハイデガー研究の第一人者である日本哲学の重鎮が、もはや古典といえる三木清『人生論ノート』の方法論で書く。むしろ人間味あふれるエッセーの趣き。こういう風に歳をとれたら、とは思う。【…

阿部和重 文藝春秋中で【introduction】 芥川賞受賞作にして幼女性愛がテーマ。毎日出版文化賞、伊藤整文学賞受賞の『シンセミア』と同じ神町ものです。 “現代的”な風俗があれこれと描かれ、なるほどそうだったのかと勉強になる一冊で、おもしろいことはおも…

【introduction】 赤瀬川原平氏が自身の西洋古今名画、観賞のポイントを語る。 みる人、語る人として一流の氏がどのように絵をみるかが、まるで氏自身になったかのようにわかる貴重な読書体験。 途中まで読んで置いておいたのを、『月と六ペンス』を読んだの…

S・モーム 新潮文庫 ブックオフで購入【introduction】 「ゴーギャンの伝記に暗示を得て芸術にとりつかれた天才の苦悩を描き、人間の通俗性の奥にある不可解性を追求した力作」とカバーに。 しかし、私としては登場人物ストリックランド=ゴーギャンの人物…