2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

クローネンバーグ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』―現実感から遠いところでしか描き得ないもの

【introduction】 気にはなっていたがバロウズの原作にひかれてみた『裸のランチ』以外はみたことのなかったクローネンバーグ作。ファンの同級生M君に誘われて出かけた。平和に暮らしていたコーヒー店主のもとに、かつて店主にひどいことをされたというマフ…

ニール・ヤング "parairie wind"―ゆったりとして律儀な深化 "without anywhere to stay"

ニール・ヤングをきいていていつも思うのは実にまじめなミュージシャンだということ、もちろん“彼なりに”ではあるけれど。 ちゃんとききだしたのは遅いが遡ってけっこうきいたし、18年ぶりという01年のフジロック、次の年か武道館の "greendale" ツアーにも…

湯本香樹実『ポプラの秋』―夢見る時間だけにわかるほんとう

今日も暖かな11月。昼間はこの小説に触発されたわけではないけれど、サツマイモを掘りました。本作によれば、新聞紙とぎんがみでくるんでポプラのはっぱで焼くのだそうです。【introduction】 湯本香樹実さん―こうやって書いてみると、何ともいえず美しい名…

B・デ・パルマ『ブラック・ダリア』―たまたまみたメタリカかオフスプリングのような

そんなに多くみているわけでもないブライアン・デ・パルマについては、特に思い入れがない代わりに別に嫌いなわけでもなく、『ブラック・ダリア』は知らなかったJ・エルロイは馳星周氏絶賛の『ホワイト・ジャズ』を読み、ツイストが過ぎて途中からもう何も…

ポール・ウェラー "Catch-Flame!"―おしゃれ頑固の骨太集大成

スタジオ最新作 "as is now"(http://blog.goo.ne.jp/quarante_ans/e/4f0267bbd5206c8622cfa92bcdbe61cb)についての記事で、学生時代、ジャケ写のファッションを真似ていたなどという個人的ファン史には触れたのでここではサウンド面のみ。そういえば、音楽…

島田雅彦『退廃姉妹』―「だらだら」と“感動的”であること

島田雅彦氏の小説世界のもっとも大きな魅力は、完璧ともいっていい見事な「だらだら加減」にある。少なくとも今まで私が読んだ中では。 たとえば、新聞小説ということも手伝って、架空のだらだら世界に徐々に身を沈めていく快感が味わえた『忘れられた帝国』…

『ホテル・ルワンダ』―「本当であること」の重要さ

高校生の頃、当時よくそうしていたように中学の同級生と麻雀をしていて、たまたまその晩のゴールデン洋画劇場で放送される『ローマの休日』の話になった。この名作をみたことがあったメンバーが私とJ君がその素晴らしさを語っていた時にT君が放った次の質問…