ダミアン・ライス "O"―生涯の秋の一枚

今きいているのが二度目だけれど、きっと生涯のベスト50に入る一枚。今日からしばらく何度も、多分来年もそのまた次の年も、ずっと特にこの秋から冬にかけてよくききそうだ。ニール・ヤングの『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』、ハイ・ラマズの『ビート・メイズ・アンド・コーン』、ゴーキーズ・ザイコティック・マンキの『スリープ・ホリディ』などがそうであるように。
直接のきっかけは9月終わりのNHKライブビートできいたグラストンベリーのライブ。鈴木慶一も「この季節にやっとお届けできる」と紹介していた。それで調べたら、マイク・ニコルズの映画『クローザー』の主題歌を歌っていることが判明。この曲 "The Blower's Daughter"(ここで顔をクリックするときけます(http://www.sonypictures.jp/movies/closer/site/)は当時、カミングス―ンTVなどできいて気になっていたのを思い出し早速買った。こうした出会いは、当時FMで録音したスタイル・カウンシルの『マイ・エヴァー・チェンジング・ムーズ』を「これいいんだよ」と高校と大学が一緒だったH君にきかせると、それがその前の晩にさんざんH君が薦めていたそのアルバムだったという体験を思い出す。こういった一致は何だか嬉しい。
アイルランド出身のシンガーソングライター。朴訥なギターに抑揚たっぷりでいながらそれが決して押しつけがましくなく歌い、リサ・ハリガンというハスキーでいながら透き通った女性ボーカルがつぶやき、穏やかでしっかりとしながら張りのあるチェロが絡む。全体の世界はとても静かなのに、ところどころで激しさが顔を覗かせて緊張感に満ちている。"Amie" のストリングスも見事で、豊かでいながら奥行を感じさせないミキシングもおもしろい。ジョー・ヘンリーを思わせる "Cheers Darlin'" のクラリネットもしみる。
アコースティックでとつとつと歌いながらオペラ風に盛りあがっていくラストの "Eskimo" はイヌイット語だそう。美しいワルツだが、そういえばニール・ヤングもアコースティックのワルツが得意だ。
おお、終わってしまった、また最初からきこう。こうやって更ける秋の夜は切な楽し。
3年前のこんなすばらしい音楽をききのがしていたとなると、もっともっとそんな音楽があるに違いない。そう考えると何とも嬉しくなる。

(最初にアマゾンで探した時は1050であってこれは安いと思っていたが、買おうと思った月曜は1800しかなくHMVの方が安いので3枚買って25%オフのためにほかに2枚買ったが、今またアマゾンを見ると1050。何だ。発売当時の『ミュージック・マガジン』を探すも、室内混乱のため見つからず)