レイ・デイヴィス ”other people’s lives”―もう初期だけだなんていわない

私にとってキンクスは、オールドロックの中でビートルズレッド・ツェッペリンとも並ぶ重要な存在。実験的精神とサウンドが魅力の後2者に対し、歌としてきくのがキンクスだから、仕事をしながら一緒に歌う特集も年に何度もある。
また他2集団に比べ、活動後期に魅力的な音源がないことを残念に思っていた。私はビートルズなら青盤時代の方が、ツェッペリンの後期にも前期の勢いに負けない円熟がある。実は本格的にキンクスをききだしたのは遅いのだが、80年代のキンクスをきいて物足りなさを感じることは何度も。それだけ初期のキンクスの魅力が大きいともいえるが。
そこに、キンクス名義からでも13年ぶり、レイ・デイヴィス、ソロ名義としては初めてのスタジオ新作である本作の登場。このところ旧作のライブなどしか出ていなかったし、こういうキャリアの長い人が久しぶりに出すアルバムにはいやあ、と首をひねるだけのものも多いからやや不安もあったものの、1曲目からひきつけられっぱなしの13曲だった。
歌がいいのはもちろん、ギターがいい。近年は生ギター一本で歌うことが多いレイ・ディヴィスだが、そんなライブで鍛えた勘所のつかみ方が思う存分発揮され、楽器こそ違うがこれまた大好きリチャード・ティーのかゆいところに手が届く歌う絶妙ピアノを思い出すほどだ。バックはわりとうるさめだが、それが何かジュールズ倶楽部あたりの番組で“楽団”をバックに生ギターをかき鳴らし歌うようで味がある。M2冒頭のストローク一発なんて何度きいてもうんうんとうなずいてしまい、一緒に歌える歌える。
『ウォータールー』や『デス・オブ・ザ・クラウン』のような曲はもちろんない。目新しい何かがあるわけでも。だが元気でこれだけ味わい深いアルバムを何年かおきにきかせてくれれば、もうキンクスは初期だけだなんていえない。後はキンクス名義の新作と、未だ経験のないライブに触れたいだけだ。
"see my friends" "waterloo sunset" の作者らしいタイトルにも好感。

4月23日初聴 アマゾンで購入

(手元に盤がなく、BGMはJ−WAVEの100年後の1曲特集。素晴らしい企画と思う。改編でラジオの番組が終わるのはなぜこんなにさびしいのか。テレビではこういう感情はわかない。自室のアンテナをねこどもがちぎってしまったので、今朝は8:30に起きてジョン・カビラ最終回を車の中で聴。自分の番組が始まってからのクリス智子にもらい泣きの曇り朝)