【introduction】
米の女性シンガーソングライター。詳しいことは知らないのですが、固定メンバーは1人のよう。『ミュージックマガジン』では、「低血圧女番長」「不思議ちゃん」のようなことが書いてありました。
最初に買った前作 "you are free" は、MSNのネットラジオできいて気に入ったから。03年自己ベストの1枚でした。次に買ったのは98年作 "monn pix" で、きいた時に以前渋谷HMVでその個性的な声に興味を持ったのを思い出しました。その Cat Power 今年1月発売の最新作。

【review】
Cat Power とはよくつけたもの。
歌がうまいかというと、そうでもない。それなら曲づくりがうまいとか、サウンドメイキングがうまいとかいうと、やっぱりそうでもない。どこがいいのかよくわからないまま、そこらへんで勝手に遊んでいるねこに惹きつけられるように何度も何度もきいてしまう。多分 Cat Power ファンの多くはそんなものなのではないだろうか。
今回はメンフィスの great musician がバックだという。確かにサウンドは脆弱さが目立った今までと違いグルーヴィだが、それがどうしたというのか。日本マンガ文化最高傑作である青いねこ型ロボットが地上から少しだけ浮きつつ周囲にマッチしているように、米国シンガーソングライター文化最高ねこは南部サウンドから少しだけ浮いていて、それでいながら違和感とは無縁。誰がバックでも、たとえばサンタナがギターを弾いたとしてもウィーンフィルの前でも、私の耳は Cat Power の声に向くだろう。
今作もっとも耳が止まるのは、M7 "where is my love"。高音をカットしたピアノのアルペジオCat Power のけだるい声が乗り、音数の少ないストリングスがかぶさる。そして最後まで何も起こらないまま、少しずつ調子を変えながら Cat Power は "where is my love" と繰り返す。
そう、人間は繰り返しに耐えられない生き物だから、きっといつも同じ場所で身繕いするようなこんな歌を眺めたくなるのだろう。
冬も春も夏も秋も。

(BGMはもちろん"The Greatest"。昨日始めた新企画は、今日も毎日新聞で8月20日の書評欄から若島正・評『ゆめまぼろし百番』駒場和男・著(http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/dokusho/news/20060820ddm015070063000c.html)。この批評はすばらしい)