現役ロック界でレディオヘッドは特別の存在だ。
毎回新しい要素に挑戦しながら、決してクオリティが落ちない。個人的なベストは90年代ベスト2の一角97年の "ok, computer" だが、たとえば "Amnesiac"の "Life in a glass house"での大胆なジャズ解釈などは、一体何かと舌を巻いた。
そして今回、ヴォーカルでフロントマン、トム・ヨーク初ソロ。スカパーサッカー、プレミアリーグのエンディングにも使われていてきいていたから期待してきいた。

レディオヘッドの一番の魅力がトム・ヨークの歌声にあることは間違いない。サウンドとしては "kid a" でのエレクトロニカ導入の延長にあるといっていいが、バンド名義でない分音の使い方はオーソドックスな印象で、その分だけヨークの曲づくりのうまさが際立った感じがする。
"Pyramid song" を思わせる不器用なリズムのM−1タイトル曲、そしてそれまでまったく使われなかったテーマが響く終盤が、キング・クリムゾンの名曲 "Starless" のテーマ再生部すら思い起こさせるM−2 "Analyse" と続く流れは圧巻だ。
もちろんサウンド上のしかけも十分。特に気になっているのは高音のエレピ音がテンションノートを響かせるM−2で、素人なりに想像すると、フランジャーのような周波数変換をピッチにかけて、不協和音のうねりをつくっているのだろうか。そして不安だが心地のいい3分を過ごした後、唐突に響く半音進行のテーマ。あまりそういうきき方をしないほうだが、この曲は何度も繰り返してきいてしまった。

レディオヘッド名義に比べ、地味なのは確か。
そういえば本当はマッシヴアタックのようなことがしたかったのだが、ギターバンドとして売れてしまったとヨークがいっていたと何かで読んだことがある。一度だけみにいった横浜アリーナでは、思ったよりずっと肉体的だったというのがもっとも強い記憶。本作では、音が肉体的でない分、大声でないつぶやきの肉体性がよく出ているのか。
これからたまにこのヨークがききたくなることはあるだろう。

そういえば、ずっと避けてきたCCCD。結局2枚しか持っていないが、その1枚が前作 "Hail to the Thief"。こういうのは交換に応じてくれるべきと思うのだが。

トム・ヨーク"the eraser" 8月4日初聴 アマゾンで購入