……NHK−BSで黄金週間というのにこれといった予定のないロック老若男女にまたとないプレゼントの“ロック黄金映画”特集があるので、ここはシリーズ化しつつある“自らの old days からみる音楽名作”としてこの5作について。

●1日 デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』
実はこの名作、初めから終わりまでみ通したことなし。とはいえ、断片的にみたどのシーンにもこの頃のボウイのかっこよさは十分伝わっていたから、今回いい機会だからみ直してみよう。
もちろん後追いできいたアルバム版。いい曲が多いということでは、ボウイ作中でもナンバーワンか。starman は時々カラオケで歌わせてもらっています。
ボウイのライブは一度だけ。売れに売れた『レッツ・ダンス』の頃、大学に入ったばかりの横浜球場。初めて行ったスタジアム・コンサートだったが、現在のようなでっかいビジョンもなく、豆粒くらいで動いているのがボウイ本人でなかったとしても、まったく気づけなかったことだろう。
直近アルバム2枚はきいたがまあまあ。それでも、数年前にみたグラストンベリーでのライブは健在だった。もっとも好きなアルバムは、ロバート・フィリップが参加して高校の頃初めてリアルタイムできいた "scary monsters"。

●2日 フー『キッズ・アー・オールライト』
これは存在こそ知れどまったくの未観。今回が楽しみだ。
黒っぽさのない、独特のタイム感が奇妙な印象のフーはそんなに思い入れのあるバンドではありませんが、映画『トミー』や『さらば青春の光』、『ウッドストック』や『ワイト島』でみたビジュアル面はやはりかっこいい。実際の映像をみる前の高校の頃、写真でみる『さらば青春の光』のモッズにはぶちのめされました。
2年前のロックオデッセイにも、ポール・ウェラーもいるなら安いとみにいき、その夏、何度かカラオケで『マイ・ジェネレーション』を歌って息を切らしました。

●3日 レッド・ツェッペリン『狂熱のライブ』
“世界最強”といわれるたZEPのライブ映画。ビデオでも持っていて、何回みたことか。志ある塾生どもも、歓喜の一本です。
高校の最初の頃、中学の同級生F君に借りたⅡとⅣを録音した90分のSONY・AHF。5歳下の弟も、「(私が大学へと去った後)あれはよくきいたな」といっていたこのテープは、数年前にデッキに入れてみたら健在。アナログ記録は頑丈です。
本映画を最初にみたのは、高1だったか、「ぴあ」をみて行った三鷹オスカー。F君らと行ったのですがその多分79年の名画座では、オープニングのジミー・ペイジのクレジットに拍手が巻き起こっていました。その6年後か、この映画館まで歩いて5分のアパートに住んだ私は、3本立て1000円の夢の時間を何度もこの暗やみで過ごすことに。
さて、テルミンボーイング奏法、Wネックギター、龍の刺繍の衣裳などペイジ得意のこけおどし、J・P・ジョーンズのわけのわからぬ中世の騎士ごっこ、ボンゾのスピード狂、そしてセクシーなプラントのGパンと魅力満載の映像は、宇宙人にも誇れる地球の20世紀文化の結晶です。
購入ビデオとは違って、前にみたNHK放送版は歌詞対訳つき。10年ほど前か「王様」がきかせてくれたバカロック歌詞が、本人たちの映像と同時に味わえるのも一興です。
ZEP関連で行ったライブは、90年代のカヴァーデール&ペイジとペイジ・ペラント×2。初めてペイジのお姿を拝んだ前者、武道館で新作〜ホワイトスネイクときた1、2曲目に微動ともしなかったネクタイ族が、ダタタ・ダタタ・タタ、ダタタ・ダタタ・タタ、の Rock'n' Roll のイントロ一発で一斉に立ち上がったシーンは、忘れることのできないロック幸福の一瞬でした。

●4日 ローリング・ストーンズ『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥギャザー』
ZEPは“最強”ならこっちは“世界最高”。しかし、すみません。彼らについても、世のストーンズ・ファンといわれる方々と比べて、そう熱意を持ち合わせているわけではありません。
とはいえこの映画は、大学の最初の年か、新宿コマ前のどこかでロードショーでみました。圧巻は『ホンキー・トンク・ウイメン』の美女続々シーン、ある行為をするロン・ウッドのいい人なところが印象的です。
多分、大学のレコード売り場だったか、知らないやつらの、「だってストーンズの映画だぜ! みんな黙って座ってるはずねえじゃん」という発言が記憶に残っていますが、高校・大学と一緒だったB君といっしょに行ったコマ前で、多くのストーンズファンは、キース・リチャーズのクレジットにも拍手も送らず。79年から82年の間に、ロックファンに変化があったのでしょうか。
思い起こせば、彼らのアナログはほぼ誰かにか、レンタルで借りてきいたよう。現存するのは、この映画のサントラである still life だけです。個人的には、この公演での under my thumb のオープニングから、let's spend the night together という流れや、重めのギターの音は好きです。白眉はやはり time in on my side 。
ストーンズのライブは、1回目と2回目の東京ドームに。「たーあああいむ・イズ・オン・マイサイッ って歌いてえよな」といった大学時代の友人I君や、「under my thumb って、久しぶりにやった曲なんだよな」っていってた高校の友人K君、under my thumb でB面が始まる gimmy shelter を貸してくれた今は亡き高校の友人H君ら、思い浮かぶ顔は多。それがストーンズの魅力でもあるでしょう。
おお、うっかり。3年間、中学校で英語を中心におしえていた私の授業プリント・タイトルは、「Let's spend the lesson together」でした。ストーンズ風訳なら、「授業をぶっ飛ばせ!」。

●6日 ジョン・レノン『イマジン』
最後を飾るにふさわしいこの作品。時間を置いてつくられたドキュメント映画の最高峰の一つと思います。
たとえば『バックビート』。若きレノンの周辺を描いた傑作ですが、どんなに似ていてもジョンじゃないやつがジョンを演じているのには我慢がならず、やはりみたいのは本物のジョンなのです。キャバーンなどでの熱い映像。現代のバンドならお手軽なビデオでもっと多くの映像が残されているかも知れませんが、当時の「貴重な映像」感がぐっと気を引き締めます。
これは大学を卒業してから、高校の友人の友人で、よく学生時代に飲んでいたM君と、やはり新宿コマ前のどっかの劇場でみた憶えがあります。
編集が見事。アスコットの「イマジン」収録当時から時代を自在にかけめぐるこの手法は、実に効果的です。
そして、何といってもビートルズ。ビデオがなかった私たちの世代で、中2の頃隣町、熊谷会館でみた、ベイ・シティー・ローラーズが中心のフィルムコンサートでみたビートルズのワシントンDCははじめてみた動くビートルズでしたが、その時みた同じ公演や、『レヴォリューション』、そしてルーフトップライブなどは、この時新たなものとして胸に刻まれました。
"God"をはじめ演奏シーンでないソロ時代の曲も、編集のすばらしさに思いがたぎります。
さすがにレノンのライブには届きませんでしたが、90年に息子のショーン他を迎えて東京ドームで行われた "happy birthday John" には行けました。

(BGMは前回からずっとパソコンに入ってたレイ・デイヴィスの新作。キンクスは、ここに入ってるべきだぞNHK、というわけで)