『やかまし村の子どもたち』〜永遠でない永遠の時間

【introduction】
『ショコラ』などのラッセ・ハルストレムが、『長くつしたのピッピ』シリーズの原作者であるリンドグレーンの原作・脚本を映画化した、わずか3軒のやかまし村の6人の子どもたちの夏休み。
過ぎ行く夏の終わりに、とみたのですが、そういう目的にはうってつけで、お腹の辺りがすーっとします。

【review】
ハルストレム作品はけっこうみていますが、好きなのは『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』と『ギルバート・グレイプ』。フランスが舞台なのにもっともアメリカナイズされている『ショコラ』はあまり感心しなかった。
“癒し系”とも評される監督だが、気持ちのいい映像の影に、いつも悲しさが隠し味になっているから説得力がある。
『マイ・ライフ……』の母との別離、『ギルバート……』の弟や母……。それがあるからこそ、『マイ・ライフ……』の田舎暮らしやボクシング、男の子少女、『ギルバート……』のJ・ルイスへの想いは、たまらないほどの切なさをもって画面上に現れる。知的障害の弟デカプリオが塔に上っていく姿と、ショートカットのルイスが重なる映像は忘れられない。
ほかの作品の話ばかりになったが、そんなハルストレムらしさがよく出たのが本作。ほのぼの、のんびりした、時間が止まったような田舎の村暮らしを描いているが、いつまでも続かない夏休み、そして子どもの時間を彼らが“知らずして知っている”ところが本作の隠し味だろう。
6人が男の子、女の子に分かれて、お互い相手を意識する。そんなシーンで、彼らが子どもの時間が永遠でないと知っていることを丁寧に描く。だからこそこの映画では、時間が永遠に感じられる。そういう風に思う。
美しい自然と、子どもたちの楽しそうなことはこの上なし。思わずにこにこしながらみていると、映画の終わりとともに夏休みは終わる。続編もあるので、来年の夏あたりにみてみよう。

1986年スウェーデン ラッセ・ハルストレム監督  90m. イマジカにて収録 9月16日観 H019