『東京暗黒街・竹の家』〜“日本の映像”の謎

【introduction】
曲者S・フラーが日本で大々的なロケを行ったシネマスコープ大作で、ヘンな日本描写で国辱的とまでいわれたそうです。
ストーリーは、軍需列車が強盗に遭い、米国捜査官が東京に巣食う闇の組織に潜入するというもの。
「国辱的」といわれればヘンな期待も高まりますが、63年生の私としてはちょっとと思うシーンはあったものの期待外れ。その反面、意外な別の見所は多く楽しめました。

【review】
洋画と日本映画の画面の違いにずっと興味があった。たとえば英語のうまい歌手が歌う日本のバンドの曲も、やっぱり日本人だなと思うのはなぜかというような。
技術的なものなのか、それとも気候・風土によるものか。それは現在、日本、欧州、南米のサッカー中継をみても感じる違いだから、日本を舞台に外国人プレイヤーが出演した日韓W杯などは、ゲームの興味とともにどのような映像になるのかという点でも注目していた。しかし現代の優れたカメラもあり、そう大きな違いは感じられなかったのが正直なところだ。
さて、55年にアメリカ人が日本で撮った本作。冒頭の列車強盗シーンでまず引きつけられたのは、西部劇などとはまったく違う木下恵介作品のような青い山の稜線である。というわけで、画面の違いは風土によるところが大きいのだろうといったんは思った。
何でこんなところに風呂がとか、これは何時代なのかとか、奇妙な感じを抱きながら映画は進み、クライマックスのデパート屋上のアクションシーン。着物姿の女性はじめ日本的なアイテムこそ見えるが、S・フラーらしい大仰な映像でとても日本映画には見えず、映像と風土の関係はさらにわからなくなった。
残念ながら未ビデオ化。

1955アメリカ サミュエル・フラー監督 102m.WOWOWにて収録 8月8日観