『マイケル・コリンズ』〜リアリティを呼ぶ愛すべきちゃちさ

【introduction】
クライング・ゲーム』のN・ジョーダン監督が描くアイルランド独立運動の英雄の伝記。恋愛あり、友情あり、裏切りありの盛りだくさんの内容で、思ったより普通のつくりです。ジュリア・ロバーツも驚くほど普通で控えめ。なおタイトルに「ちゃち」と書きましたが、映画全体はがっちりした本格作品です。

【review】
主人公マイケル・コリンズはよく知らなかったのでずいぶん前に読んだ『物語 アイルランドの歴史』を引っ張り出してみたが、扱いは小さかった。あまり史料のない人物なのだそうだ。
N・ジョーダン監督映画らしい緊迫感、リアリティあふれる作品。こういう映画に友情や恋愛が入ると全体に陳腐になることが多いが、本作の場合人物像や事件の理解を深めるのに役立っていて無理がない。独立戦争前となると、やはり交渉、かけひきが大事なのだななどと学んだことも多い。
圧巻はラグビー場のシーン。見た目はやけにちゃちでとことこ出てくる装甲車、まったくわけがわかっていない民衆などをエンターテインメントとは異なる方法で描き、内から始まる戦争の恐怖を伝える。
かつて『地球から2000万マイル』をみて、怪獣のちょうどいい大きさが妙なリアリティを感じさせて驚いたことがあったが、本作ではまたちゃちさがリアリティにつながると発見。ああ、そういえば53年版の『宇宙戦争』でもこぽこぽいう見るからにつくりものの岩石にやけに心ときめいたが、同じことだろうか。よくできた最近のハリウッド産武器では、何だか嘘っぽくて反対のチャチさを感じてしまうのだ。

1996年アメリカ ニール・ジョーダン監督 133m イマジカで収録 8月2日観