『死刑台のメロディ』〜三つの時代の“理想”

008 1971イタリア ジュリアーノ・モンタルド監督 NHK−BSで収録

【introduction】
1920年代“アメリカ史の汚点”、サッコ=ヴァンゼッティ事件の映画化だそうですが、不勉強にもこの事件についてはまったく知りませんでした。
イタリア移民であり無政府主義者である2人が、偏見の中で死刑台に追い込まれていくというストーリー。事件のあらましを知るのに十分な作品ですが、それより、モリコーネジョーン・バエズの音楽、アップを多用したこの当時のイタリア映画らしい濃厚な絵づくりでこうした政治的事件が描かれている取り合わせの妙に驚きました。
マイケル・ムーアら、演出いっぱいのドキュメントが好きな人にいい刺激になりそうです。

【review】
二人の見解が食い違っていくところ、特にサッコが思想に殉じるといった様子ではないところに妙なリアリティがあった。
「理想を持つものは……」という歌詞が、“理想”をあまり考えることのなくなりつつある21世紀初頭人にずっしりと重い。製作された1970年代、事件の舞台の20年代と、みる人のいる三つの時代が一直線に連なって、「普遍」ということ、「信じる」ということについて考えさせられる。