『リリア 4-ever』 〜ドキュメントでは語れないリアル

2002、スウェーデン、監督/ルーカス・ムーディソン シネフィル・イマジカにて収録

【introduction】
世に少なくない、“痛い”表現に引き寄せられてしまう人なら。といっても、劇場未公開、ビデオなしのため、今後の拡大に期待。
本国スウェーデンで、『タイタニック』を上回った動員数という、『ショー・ミー・ラヴ』(98)のムーディソン監督第3作。未成年売買を扱ったとてつもない衝撃作ですが、私にはドキュメントでなく劇映画というかたちで表現したことが大変意義深いことと思われます。

【review】
どうしても、『ショー・ミー・ラヴ』の話から。
「おお、スウェーデンの若者もこんなにつまらながってるのか」と思われる、ぎざぎざの前半から始まってみるものの共感をつのり、それを終盤の大盛り上がりにつなぐ手腕には、監督第一作とはいえ、大いに感心したものです。前情報のないまますすめた私周辺の反応も上々で、これが大ヒットするスウェーデン恐るべし、との印象を強くしました。
そして、機会なく2作目は未見ですが、本作をみることで、『ショー・ミー・ラヴ』の驚きが何だったのかがわかった気がします。
退屈はリアルだけど、すべてではない。現実がどんなに過酷でも夢を見ることはできるから、本作での羽根は『ショー・ミー・ラヴ』の恋慕であり、ただ本作については、ストーリーが救いようもない方向に向った、ということなのでしょう。
管理人さんのジャガイモを拾うシーンが、モラルやなんやかなで、正しさやいい加減さをうつろう十代の姿を描き出していて見事。表現としては、「羽根」によって幻想を区別する“わかりやすい”手法が、好みは分かれるでしょうが、本作をみてほしい層に訴えかける手段として好感が持てました。
痛い映画、しんどい映画を避ける人は多いし、もちろん、それはわからないでもありません。ですが、映画にある種のリアリティを求める人がこういった表現に引きつけられるのはそれ以上によくわかります。今、そういった表現で見逃せないのは、知る限りでは国内で塩田明彦、海外ではこの監督でしょうか。
次作も目が離せません。