『夕陽のガンマン』 〜重機ATM強盗のルーツか?

006 1965、イタリア、監督:セルジオ・レオーネ WOWOWで収録

【introduction】
一世を風靡したイタリア製西部劇、マカロニウェスタンの傑作。最初、あまりに疲れた時にみて不覚にも寝てしまい、数週間後観了。
私もこの分野はあまりみていませんが、“かっこよさ”の新しいかたちを求めている人には、よい題材になりそうな古典です。とくに“必殺シリーズ”に興味のある人。

【review】
ハイブリッドの魅力、ということでしょうか。
西部劇にしても、ジョン・ウェインをはじめとするアメリカ製傑作の数々が、どうしても“正義”に傾きがちなのに対し、賞金稼ぎとか、単なるというのはよくないですが、単なる復讐のために行動する本作の登場人物は個人的な行動原則に導かれているようです。
そして、有名なモリコーネの口笛が効果的な音楽、黒澤明の影響が強いといわれる、ロングショット多様の映像。つまり、バラバラにしてもかっこいいそれぞれの要素が、結集してまったく別の世界を構成する、雑種芸術としての映画の、もっとも成功した一例といえるでしょう。
思えばこのクールさは、日本の”必殺シリーズ”などにも似たテイストともいえます。そして、この美学が現在の映画からまったく姿を消してしまったのは惜しいことです。
さて、そういうこととはまったく別ですが、日本犯罪史的に興味深いシーンが一つ。銀行から金庫ごとロープでくくって、そのまま馬車で持ち去るというアイディアには感服しました。ワイルドな重機ATM強盗のオリジネイターは、この作品をみていたのかもしれません。
この時期のイーストウッドのかっこよさは触れるまでもありませんが、本作は個人より作品としての魅力が勝ち。私のイーストウッドへの興味は歳がいってからの方があり、監督ベストは『ホワイトハンターブラックハート』や『ブロンコ・ビリー』など自己言及のおもしろさが出た作品です。